【特集】「難民採用」という選択。同情ではない”合理的な理由”で採用する日本企業を増やしたい|株式会社アルーシャ

【特集】「難民採用」という選択。同情ではない”合理的な理由”で採用する日本企業を増やしたい|株式会社アルーシャ

2017.05.11

東京都虎ノ門にあるネイルサロンを運営している株式会社アルーシャ。そこで活躍するネイリストは、実は難民なんです。アルーシャ代表の岩瀬さんと話しながら、新しい採用の方法である「難民採用」について考えました。

はじめに

株式会社アルーシャ 概要



東京都虎ノ門にあるネイルサロン。2009年設立。2010年より日本に暮らす難民の自立支援として、難民をネイリストに育成し自社ネイルサロンで仕事を提供している。「難民ネイルサロン」として話題に。他にも、ネイル商材等のネット販売事業やヘッドハンティング事業等幅広く展開。テレビ・ラジオ、新聞、雑誌等メディアに多数出演掲載されている。

岩瀬さん 略歴

株式会社アルーシャの代表取締役。新卒で大手人材派遣会社入社。その後、外資系金融システム会社を経て、財務コンサルティング会社の起業に参画。英国ビジネススクールを卒業し、米系エグゼクティブサーチファームに勤務後、同社を起業。大学・高校はじめ数多くの講演を行い「難民問題・起業・女性の自立」を発信している。

日本にいる難民の実態

日本にいる難民の実態を教えてください

いわゆる難民は「人種、宗教、国籍、政治的理由等で自分の国にいると迫害される恐れがあり、国外に逃げた方」を指します。難民は留学生など自分の意思で日本に来た方と違い、「一番早くビザを発給してくれた国がたまたま日本だった」ために日本に来るのです。そのため、日本語ができない方も多いです。

人数に関して、おそらく『何名』とお伝えしてもピンとこないと思うので、参考となる数値をお伝えします。平成28年の難民認定申請数は10,901人で,このうち難民として認定された人は28人だけ。だいたい390人に1人しか認定を受けられません。

現在、日本で難民と認められた方は約1万5千人(平成年28年末の累計数)います。しかしその実態はほとんど知られていません。あまりにも難民への理解が浸透していないのでガッカリしてしまうことがあります。

声を上げられない難民達が日本には沢山いる

難民の方々へのインタビューオファーをたくさんいただくんですが、彼らはインタビューを受け難い事情があるのです。日本に難民として滞在していること=母国の政府へ反旗をひるがえすことなので、日本で大々的にメッセージを発信すると、残してきた家族や親族が迫害や処罰を受ける危険があるそうです。

家族を呼び寄せればいいと言われることもありますが、難民の方々が家族を呼ぶことは難しいです。家族を呼び寄せるには、日本で就労し、納税した上で日本政府に認められる必要があります。ただ、高齢の家族を日本に呼び寄せても、言葉や文化の違いで、それが「幸せ」かは分からないため、躊躇している方々もいるそうです。これらの事情により、国内に難民の現状が伝わりにくくなっているのです。

難民採用という選択肢を日本中に


実は合理的|難民を採用するメリット

まだまだ国内で難民はあまり認知されていない存在です。しかし、実は難民を採用することは合理的なんですよ。

まず、難民は簡単に母国へ帰ることができません。外国人社員の定着が課題となっている現在、帰国しない覚悟で働いてくれる外国人はとても戦力になると思います。就労資格に関しては、難民申請から6ヶ月間経っても審査結果が出ていない場合に、在留資格変更申請をすれば就労が認められます。

ビザについても心配することなく採用できますし、「難民=優秀ではない」と思われているかも知れませんが、優秀な方も多いのですよ。日本企業にとって、活用のメリットは大きいと考えています。

ズバリ、難民採用が適する業界はどこだと思いますか?

ネイルサロンをやっている私が言うのも、という気はするのですが、美容サービスで求められる高度なサービス以外がいいと思います。もし今の自分が再度採用支援を0から始めるとしたら、ネイルサロンは選びません。

例えばアメリカのネイルサロンだと、携帯電話をいじりながらネイリスト同士で話をしているんです。『ちゃんとできてるのかな?』と心配になりますよね。でも、周りのアメリカ人顧客たちは何とも思ってなさそうでした。しかし、日本ではこんなことは許されません。サービスの結果だけではなく、施術中の姿勢や態度まで問われますから。

では、どの業界が適するのか?と考えても、一概には言えないです。「日本人に適する業界は?」と聞かれても、答えられないのと同じです。個人差、適性がありますからね。ただ、日本語がビギナーでもパソコンが得意なら、WEBエンジニア等も良いと思いますし、「日本人が難民(外国人)に慣れる」という意味では、飲食店やコンビニの接客に外国人を起用してもらいたいとも個人的には思っています。

手に職をつけることの大事さ|まずはトライアルから

接客業などで働くことももちろん大切なことだとは思いますが、コンビニの店員などの場合、ノウハウや専門性が身につかない。まずはしっかりと手に職をつけることが重要だと考えています。とはいえ、個人のやりたいことも尊重しなくてはならないので、一概には言えません。「手に職をつける」というのは簡単なことではありませんが、難民は、景気が悪くなると日本人より先にレイオフされることが多いので、仕事しながら日本語検定を目指したり、「世界のどこでも通用する技術」を身につけられることを願っています。

ぜひ、日本企業の方にはトライアルでもいいのでまず採用をしていただきたいです。職場に1人でも外国人がいることで、多くの学びや気づきを得られると考えています。これは、実際に私がネイルサロンを運営している中で感じた実体験です。

実際、仕事を紹介しながら気づいた点はありますか?

業界により、日本語ニーズの強さが違うのですが、予想外だったのが、建築系の方からの日本語ニーズの高さでした。当初、勝手なイメージで建築系は言語も関係なさそうだし、いけるかなと考えてました。しかし、現場レベルでは「危ない!」などのとっさの一言を理解してもらえず、危険だと。これにはなるほどなと考えさせられました。

難民の方を採用する上で注意する点はありますか?

これは難民に限らないとは思いますが、「ビジネスルールは守り、文化は理解する」を徹底することだと思います。どうしても、日本人の感覚で文化を押し付けたくなることがあるんですが、そこはグッと我慢。とはいえ、「母国では遅刻が当たり前」だからといって遅刻を繰り返されるのは論外。ビジネスルールはきちんと守ってもらいつつ、相手の文化を尊重することが重要だと感じています。

難民支援の今後を読む

難民採用の今後は、どうなっていくと思いますか?

現在、大手企業で東南アジアへの展開を積極的に進めているところから、相談をもらっています。すでに先進的な企業は難民の労働力に目をつけ、採用を始めているのです。大手を中心に採用が進んでいくと思います。

岩瀬さんは今後、どのように支援を進めていきますか?

難民と言っても、人によりその能力には大きな差があります。「難民」とひとくくりにせず、インテリジェンスやスキルベースでの採用をして欲しいです。

今後も私はやや上位層の難民の採用支援から行い、まだまだスキルが十分でない方向けの研修などを行いながら、徐々に裾野を広げていこうと思っています。

現在、難民の方向けに日本語レッスンを週に一度行っており、確実に成果を感じています。また、難民に対して私はとても厳しいです。日本語講習でも遅刻にはしっかり注意し怒ります。「あの日本人、いつもキレてる」と思われているかも知れませんが。難民に対して、辛抱強く且つ楽しみながら教育して、会社の戦力にしていただきたいと願っています。

編集後記



筆者と岩瀬さんが出会ったのは3年前。この3年間で岩瀬さんは多くの難民の方々へ道を示してきました。

筆者は取材前、同情の気持ちで難民の方へ何かできないかと考えてました。しかし実際に取材して考えが大きく変わり、難民の方々の採用支援を行うことは、日本のグローバル化、ダイバーシティ化の役に立つと思えるようになりました。同情的な理由による採用支援から、合理的な理由による採用支援に考えが変わったのです。

“これは難民に限らないとは思いますが、「ビジネスルールは守り、文化は理解する」を徹底することだと思います。どうしても、日本人の感覚で文化を押し付けたくなることがあるんですが、そこはグッと我慢。とはいえ、「母国では遅刻が当たり前」だからといって遅刻を繰り返されるのは論外。ビジネスルールはきちんと守ってもらいつつ、相手の文化を尊重することが重要”

結局のところ、難民も外国人。難民だからといってひとくくりにせず、貴重な会社の戦力として迎えることができれば、大きな戦力になります。

外国人の採用を検討している日本企業の方、難民採用という選択肢を検討してみませんか?きっと御社の力になります。

取材協力

株式会社アルーシャ 代表取締役 岩瀬 香奈子 さん

株式会社アルーシャ概要
2009年設立。2010年より日本に暮らす難民の自立支援として、難民をネイリストに育成し、自社ネイルサロンで仕事を提供している。「難民ネイルサロン」として話題に。他にも、ネイル商材等のネット販売事業やヘッドハンティング事業等幅広く展開。テレビ・ラジオ、新聞、雑誌等メディアに多数出演掲載されている。
http://www.arusha.co.jp/

岩瀬さん略歴
株式会社アルーシャの代表取締役。新卒で大手人材派遣会社入社。その後、外資系金融システム会社を経て、財務コンサルティング会社の起業に参画。
英国ビジネススクールを卒業し、米系エグゼクティブサーチファームに勤務後、同社を起業。大学・高校はじめ数多くの講演を行い「難民問題・起業・女性の自立」を発信している。

参考サイト

認定NPO法人 難民支援協会
https://www.refugee.or.jp/

入国管理局 「難民認定制度」
http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/nanmin/nanmin.html

法務省報道発表(平成29年3月24日)
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri03_00122.html
法務省報道発表(平成29年3月24日)別表3 我が国における難民庇護の状況等
http://www.moj.go.jp/content/001221347.pdf

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